猫喰いカノジョ

プロローグ

家の静けさが嫌いだった。

学校での妙によそよそしい視線も嫌いだった。

わたしには、居場所がなかった。
追い出されたわけではないのに、いつも息が詰まりそうだった。


だからわたしは、放課後いろんな場所を歩き回るようになっていた。

アテもなく住宅街を歩き回るのは、海を漂流しているみたいで楽しい。

その日はいつもより傷心中で、住宅街の奥深くへと突き進んでいた。

知らない路地を抜けると、背の低い雑草に囲まれた古い建物がそびえ立つ。

「何、ここ……」

草木が風に揺れる音だけが聞こえるそこを、わたしはすぐに気に入った。

秘密基地を見つけた子どもみたいに、意気揚々と進んでいく。

引き寄せられるように足を踏み入れると、彼女はそこにいた。

「ん…?アンタ誰?」

バチリと目があった瞬間、わたしの世界が動き始めたような気がした。
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