双子センサー 〜告白したら人違いでした。〜
episode2 たりない
「じゃあ、お大事に」
私を保健室に送り届けた琥珀先輩は、早々に部屋から出て行った。布団の中で、一つ息をつく。
「どうしよう……」
まだ二時間目までしか終わっていないのに、教室を出てきてしまった。いっそ今日はこのまま早退してしまおうなんてずるい考えが浮かんでくる。高校に入学して数ヶ月。まさかこんな、少女漫画のテンプレみたいなことを二回も経験するとは思わなかった。
「しかも琥珀先輩……甘いお菓子みたいな匂いしたし……」
思い出すだけで、ふわふわしてくる。もしかして私は本当に熱があるんじゃないか。私は慌てて布団にくるまってカーテンを閉める。熱がある状態で自転車は危なすぎる。せめてお昼までここで寝て、帰るかはその後考えよう。
ゆっくり息を吸うと、少しだけ消毒液の匂いがする。不思議な模様の保健室の天井をぼんやりと眺める。
「……あれ、誰もいないじゃん」
眠りに落ちかけて、ドアが開く音と誰かの声で目が覚める。先生ではない誰かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。誰だろう。私は起き上がって、ぼんやりした頭でゆっくりカーテンを開ける。
「あ、いたんだ」
「あ、えっと……?」
「翡翠。どうした。具合悪い?」
少し開いたカーテンから顔だけが見える。
「ちょっとだけ、人酔いしてしまって……」
「琥珀か、相変わらずすごいよな」
「まぁそんなところです……」
沈黙が流れる。すごく気まずい。
「あいつは昔からそう。なんて言うか、磁石みたいな。同じ水沢なのにな。……超えたくても越えられないよ」
翡翠先輩は少し困ったように笑って視線を窓に向ける。その横顔は寂しそうだった。
「私とお姉ちゃんみたい」
「大変なんだな、後輩も」
そうか、先輩もなんだ。
私は姉に対して劣等感もなければ嫉妬もない。
ただ――。
ある時を境に勝てないと実感した。見ていて圧倒されるようになった。実力の話と言うよりも、戦う場所自体の違いのような気もする。
「いつも肩書きでしか見られないんだよな……」
「肩書きなんて、いらないのにな」
窓の外を見たまま、先輩が呟いた。それは、私に向けられた言葉ではなかったのかもしれない。でも、そう返ってきただけで私の心はすっと軽くなった。
「具合悪いなら無理すんなよ。じゃあまた」
私を保健室に送り届けた琥珀先輩は、早々に部屋から出て行った。布団の中で、一つ息をつく。
「どうしよう……」
まだ二時間目までしか終わっていないのに、教室を出てきてしまった。いっそ今日はこのまま早退してしまおうなんてずるい考えが浮かんでくる。高校に入学して数ヶ月。まさかこんな、少女漫画のテンプレみたいなことを二回も経験するとは思わなかった。
「しかも琥珀先輩……甘いお菓子みたいな匂いしたし……」
思い出すだけで、ふわふわしてくる。もしかして私は本当に熱があるんじゃないか。私は慌てて布団にくるまってカーテンを閉める。熱がある状態で自転車は危なすぎる。せめてお昼までここで寝て、帰るかはその後考えよう。
ゆっくり息を吸うと、少しだけ消毒液の匂いがする。不思議な模様の保健室の天井をぼんやりと眺める。
「……あれ、誰もいないじゃん」
眠りに落ちかけて、ドアが開く音と誰かの声で目が覚める。先生ではない誰かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。誰だろう。私は起き上がって、ぼんやりした頭でゆっくりカーテンを開ける。
「あ、いたんだ」
「あ、えっと……?」
「翡翠。どうした。具合悪い?」
少し開いたカーテンから顔だけが見える。
「ちょっとだけ、人酔いしてしまって……」
「琥珀か、相変わらずすごいよな」
「まぁそんなところです……」
沈黙が流れる。すごく気まずい。
「あいつは昔からそう。なんて言うか、磁石みたいな。同じ水沢なのにな。……超えたくても越えられないよ」
翡翠先輩は少し困ったように笑って視線を窓に向ける。その横顔は寂しそうだった。
「私とお姉ちゃんみたい」
「大変なんだな、後輩も」
そうか、先輩もなんだ。
私は姉に対して劣等感もなければ嫉妬もない。
ただ――。
ある時を境に勝てないと実感した。見ていて圧倒されるようになった。実力の話と言うよりも、戦う場所自体の違いのような気もする。
「いつも肩書きでしか見られないんだよな……」
「肩書きなんて、いらないのにな」
窓の外を見たまま、先輩が呟いた。それは、私に向けられた言葉ではなかったのかもしれない。でも、そう返ってきただけで私の心はすっと軽くなった。
「具合悪いなら無理すんなよ。じゃあまた」