こころ、ふわり


私と菊ちゃんは美術室でいつものように隣同士に座った。


始業のチャイムが鳴ると、芦屋先生がすぐにやって来た。


先週から彼はずっとメガネをかけていて、今日もまだメガネだった。


余計な心配かもしれないけれど、メガネだとあまり目が見えてないようなので大丈夫なのかと思ってしまう。


「では授業を始めます」


先生の声はいつもと同じ。


低くて、穏やかで、心地いい。


この声も、私はとても好きだった。


迷うことはあっても、こうやって芦屋先生を見るとどうしても彼のことが好きな気持ちが大きくなる。


ただ、昨日の真司に気持ちが揺らいだのも事実だった。


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