こころ、ふわり


暗い校舎の廊下を歩きながら、携帯で芦屋先生に電話をかけた。


何回かコールをしたあと、先生の声が聞こえた。


『部活終わった?』


「はい……」


私はどんな風に先生と話せばいいか分からなくなって、なんとも弱々しい声で返事をした。


『校門を出たところの路肩に車停めてるから、そこまで来れるかな。今日は送っていくよ』


芦屋先生はもう仕事を終えて私を待っていてくれたらしい。


嬉しいけれど、これから話す内容を想像するとそう簡単に喜べずにいた。


靴を履き替えて玄関から外へ出ると、一気に冷気が体を覆う。
制服の上にコートを着ていても、2月は寒い。


マフラーをきつく巻いて、そそくさと校門を目指した。


先生が言っていた通り、校門から出てすぐの路肩に黒い車が停まっていた。


助手席の窓を軽くコンコンと叩くと、運転席に座る芦屋先生が体を起こすのが見えた。


私は会釈して、助手席から車へ乗り込んだ。


車の中は暖房がついていて、とても暖かかった。
鼻の先がツンとなる感覚に襲われ、少し痛い。


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