強迫性狂愛

婚約者

―――……



「百花」


静かなノック音と共に、扉が開いたかと思うと


「どうしたの?紅」


いつも冷静な紅が額に汗を掻きながら部屋に入ってきた。


「百花…っ、黒澤様に言わなかったの?」

「え?何を?」

「婚約解消のことよ…」

「……紅…」


「言える訳がないよ」と俯きながらボソボソと小さな声で話した。


「バカね……、ほんとにバカ」

「ごめん…」

「どうして?付き合うならちゃんと…」

「ごめんね…、べにぃ…」


はっきりしない私が、いけないの…。

こわいの…。

迅に「付き合って」って言うのが、こわいの…。

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