* another sky *

  side by KOHTA


「飲みに行こうぜ。」


久しぶりの誘いを、不思議に思わなかったわけじゃない。

カナダへ転勤が決まった俺への、壮行会のようなものかと思っていた。


待ち合わせに現れたのは、紺。


そして、――――。


「…綾子ちゃん?」


玲と麻友理の友達に会うのは久しぶりだ。

一緒に住み始めたと聞いて、納得する。


上手く、いってるんだ…。


お調子者の紺には、綾子ちゃんのようなしっかりした女の子が合うんだろうな。


お互い近況を話し合い、酒席は賑やかに盛り上がっていく。


「渡瀬さん、出発って、来週なんですよね?」


程良くアルコールが回った頃合いを見計らったように、綾子ちゃんは切り出した。


「うん。」


「一人で行くって本当ですか?」


―――――――!!


一瞬、固まってしまった俺に、紺は視線を逸らした。


…そういうことか。

麻友理に何か、聞いたんだな…。


「麻友理は……。

一緒に連れて行かないんですか?」


―――――――!!


綾子ちゃんの真っ直ぐな瞳は、あやふやな答えを求めていない。


ただ、正直に言うと、――――。

放っておいて欲しかった。


何の関係が、あるんだよ。

それを聞くために、付いてきたのかよ。

ったく、紺も紺だ。

そういう話なら、断ったのに。


「…一人で…、行こうと思ってるよ。」
< 364 / 769 >

この作品をシェア

pagetop