苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
陽貴SIDE1
改札口で芦原と別れ、自宅に戻った。
普段、仕事を終えて飲みに行くと、それだけで怠くなることもあるが、今夜は疲労を感じるどころか爽快感さえ生まれている。
久しぶりにリラックスして笑ったせいだろうか。
芦原が無防備な様子で、楽しそうに食事をしている姿が目に浮かぶ。
あまり自分を飾って見せたりはしないんだな……。
思わず頬が緩み、ありのままの彼女に親しみを覚えた。
熱いシャワーを浴び、濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへ向かう。
無意識に、カウンターテーブルに置いたスマホが目に入る。なるべく気にしないよう心掛けているが、ここのところ、いつも芦原の顔ばかりが浮かんでいた。
本来、社内の人間とは個人的に連絡先を交換するべきじゃない。そう思って常に行動しているが、今夜は少し踏み込み過ぎたような気がする。
芦原と初めて会った面接の時を思い出す。
彼女は緊張した面持ちで俺の真正面に座る。まっすぐにこちらを向く彼女の瞳は真剣そのものだった。
「なぜここで働きたいのか?」そう尋ねると、彼女は典型的な志望理由を並べた。こちらの質問に対して誠実に受け止め、何とか答えを導きだそうとする。