極上ショコラ【短】
「……雛子」


何かを求めるような呼び方にも聞こえたけど、今のあたしにはその真意を知る術どころか、考える余裕も無い。


篠原は普段の涼しげな表情を失い、肌はしっとりと汗ばんでいる。


自分(アタシ)に欲情する彼を愛おしいなんて思ってしまうのは、熱に浮かされたような思考のせいに違いなくて。


だから、時折交わる瞳にどうしようもなく幸せを感じて胸の奥が高鳴るのも、激しいキスが原因に決まっている。


もう、うんざりだ。


「もっとドロドロになれよ」


そう思って篠原の強引さに辟易していても、あたしはやっぱり彼には抗えないのだ――…。


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