憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「オカン、昼メシ出来た。 早く食べよう」

 「はーい」

 オカンをダイニングテーブルに呼び、2人で『いただきます』と唱和すると、目の前に並ぶ料理を掃除機の様に吸い込み、掻き込み食った。

 「落ち着いて食べなさいよ。 喉に詰まるわよ」

 「食器、帰ってきたら洗うから、そのままでいいよ」

 気が逸っているせいか、オカンとの会話も成り立たない始末。

 ババっと食べ終え席を立つと、ケーキを買いに行くべくコートに袖を通し、早川さんから貰ったネックウォマーを装着。

 「莉子ちゃんに会えるからって、ウキウキしちゃって」

 出かける準備をしているオレを見ながら、オカンが意地悪に笑った。

 「甘い物が食いたくなっただけ。 脳が糖分を欲してるの」

 オカンの態度が癪に障る為、言い返す。

 「そういうお医者さんみたいな事を言うのは、医大に受かってからにしてよねー」

 更に癇に障る笑みを見せるオカン。

 くそ!! 絶対受かってやる。 早川さんのバイト先のケーキで糖分補給しまくって、必ず受かってやる。

 なんならホール食いしてやるわ。

 「行ってきます!!」

 オカンに絡まれるのが面倒で、早々に家を出た。
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