憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 オレの向かいに座った早川さんのお父さんに、『お願いします』と再度頭を下げる。

 後頭部の上で、早川さんのお父さんが『ゴクッ』と唾を飲んだのが分かった。

 「・・・相手がキミだと、簡単には許せないよね。 キミが悪いわけじゃないのは、頭では分かってるんだけどね。 ・・・なんでわざわざワタシの許可をもらおうと思ったの?? 勝手に付き合う事だって出来るだろうに」

 早川さんのお父さんが、眉間に皺を作りながらも、優しい視線でオレを見た。

 「莉子さんが『お父さんと僕の母が嫌がる事はしたくない』と言っていまして・・・。 僕もそう思うからです」

 「じゃあ、ワタシが反対したら莉子とは付き合わないと言う事??」

 早川さんのお父さんが、オレに試す様な目を向けた。

 「許してもらえるまで、何度でも頭を下げに来ます」

 『お願いします』と、また頭を下げる。

 早川さんのお父さんからしたら、妻の不倫相手の息子に頭下げられたところで、大事な娘を渡すわけにはいかないだろう。

 どうしたら許してもらえるだろう。

 何て言えば、説得出来るのだろう。

 今まで、人並み以上に勉強してきたはずなのに、こんな時どうすれば良いのは分からない。

 ただただ、頭を下げる事しか出来ない。
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