憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「・・・莉子ちゃんはだめ。 認めない。 湊、莉子ちゃんに決めるのはまだ早いわよ。 大学に入れば、莉子ちゃんより賢くて美人なコがいくらでもいる」

 「オカン!! 早川さんに謝って!! 今すぐ謝って!! 失礼すぎる!!」

 オカンが吐き捨てた言葉に、思わず立ち上がる。

 そんなオレの左腕を、早川さんが引っ張って座わらそうとした。

 「でも!!「大丈夫、大丈夫」

 今度は早川さんが、さっきのオレを真似て少しだけ微笑んだ。

 でも、オレを見上げる早川さんの目には、ちょっと揺らせば零れ落ちそうに涙が溜まっていた。

 だけど、早川さんは泣かないだろう。

 涙を流せばオカンを悪者にしてしまうし、オレが早川さんを庇うだろう事を、彼女は分かっているから。

 早川さんは、そういう子。

 凄く凄く優しい子。

 だから、早川さんを傷つけるのは、オカンであっても赦せない。
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