憎悪と、懺悔と、恋慕。
木崎センパイの少し後ろを、木崎センパイの影を見ながら歩く。
今日も会話はない。
気まずいと言えば気まずいが、下手な事喋って嫌な顔されたくないし、そもそも喋りたい事もない。
しかも、気まずい状態にも若干慣れた。
ただ、木崎センパイの後を追って歩く。
「・・・え。」
木崎センパイと一緒に電車乗り、降りた駅は木崎センパイの家がある駅だった。
「・・・木崎センパイの家に行くワケじゃないですよね??」
木崎センパイは、ワタシが木崎センパイの家に行く事を嫌がってたし、ワタシだって行くのが辛いとはっきり言った。
木崎センパイは何の目的でこの駅にワタシを連れて来たのだろう。
「・・・オカンが、『莉子ちゃんが遊びに来ない』って淋しがってて・・・。 今日はウチで晩ゴハン食ってって」
木崎センパイの前髪に隠れた眉毛が、中央に押し寄せられているのが見えた。
母親に引け目を感じている木崎センパイは、お母さんの為なら何でもする。
お母さんが最優先。 ワタシがどんなに辛い思いをしていようとも、そんな事は考慮されない。
木崎センパイにとって、ワタシの気持ちなんてどうでも良いのだろう。
木崎センパイのお父さんの愛人の娘の気持ちなんか。