憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 「・・・スイマセン。 辞書使ってもいいですか??」

 木崎センパイの返事を待たずに、鞄から電子辞書を取り出す。

 だって、『ダメ』と言われたところで訳せない。

 「ん?? どの単語が分かんない??」

 木崎センパイは、ワタシが何か1つ分からない単語があるために訳せないでいると思っているらしい。

 「・・・言ってしまえば、全部です」

 名詞も副詞も関係代名詞も、全部分からない。

 「・・・え」

 木崎センパイが一瞬固まって、『ふぅ』と溜息を吐いた。

 ・・・ヤバイ。 木崎センパイの顔、めっさ歪んでる。

 「ごめんなさいごめんなさい!! やっぱ、嫌ですよね!? ワタシみたいなアホに勉強教えるのなんて!!」

 英文、サッパリ解けないから謝るしかない。

 ふざけてる様に見えたかもしれないが、決してそんな事はなく、真剣に分からないんだ。

 「別に、勉強を教える事は嫌じゃないよ」

 と、木崎センパイは否定してくれたけど、じゃあさっきの溜息は何なんだ。

 『勉強教える事は嫌じゃない』

 あ、そっか。

 「・・・ワタシの事が、嫌なんですよね」
< 92 / 280 >

この作品をシェア

pagetop