Epithalamium
Epithalamium
国中の鐘が鳴っているのではないか。

ようやく、迎えることのできた日の朝。アルフリートは絶え間なく鳴り響く鐘の音で目を醒ますとそう思っていた。

今日は朝早くから儀式がたくさんある。しかし、それを苦痛と思う気持ちなど彼にはまったくないといえるのだった。なんといっても、今日の日というのを一日千秋の思いで待っていたのである。アルフリートは儀式の先導に訪れる相手を心待ちにしているのだった。



「殿下、ご用意はよろしいでしょうか」



ゆっくりと扉が開かれ、儀式の先導たる宰相が姿をみせている。その姿にアルフリートは鷹揚に頷いていた。



「用意とはいっても、大したことはないだろう。先祖に挨拶をして、礼服を着るだけだろう」


「たしかにそうではございます。しかし、順序というものがございます。まずは代々の王の霊廟に」


「わかっている」



宰相とそのように言葉を交わしている間に、アルフリートには白い質素な服が着せられている。それは、先祖を敬うということを態度でも示すべきことだからである。



「レックス、先祖がこの結婚をダメだということはあるだろうか」


「そればかりは、私めではなんとも答えられません。しかし、そのようなことはありませんでしょう。神々も先祖もこの婚姻は喜んでおられるはずです」


「だといいんだがな」



どことなく自信のないアルフリートの様子。そんな彼にレックスは呆れたような顔をしているのだった。



「そのような顔ではダメかもしれませんな」


「レックス!」



アルフリートの声は引きつり、うわずっている。彼にすれば、ここでダメだと言われたら生きていけないと思っているのだろう。そんなアルフリートにレックスはため息をつきながらこたえている。



「いずれ、ご即位なさる時もご先祖のお声を聞かねばならないのですぞ。今からこのようなことでは、先が思いやられます」



レックスの声にアルフリートは思わず首を垂れている。そんな彼をみていたレックスはこのようなことを続けていては時間がなくなると思ったのだろう。アルフリートの支度ができたのを確認すると先導するように歩き始めている。



「殿下、お時間がございません。花嫁は神々との対面を済まされておる頃です。遅れてはなりません」

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