春に想われ 秋を愛した夏
九月の愛と知らなかった想い




 ―――― 九月の愛と知らなかった想い ――――




久しぶりに居酒屋へ顔を出すことにした。
塔子のことを驚かしたい気持ちもあったけれど、一応前もって連絡を入れておいた。

定時きっかりに会社を出て、途中春斗と待ち合わせて居酒屋へと向かう。
お店のドアを潜ると、塔子がいつもの席で既に一杯目かと思われるビールを早くも堪能しているのが見えた。

入ってきた私たちに気づいた塔子は、久しぶりー。と手を上げて迎えてくれたあと、待ってましたとばかりに愚痴を零した。

「なんなのよー。早速二人で登場ってわけー? 一人身への嫌味かしら」

やってらんない。とわざと憎まれ口を叩くと、私たちが席についてすぐに生二つー。とかわりに注文をしてくれた。

「今晩は、野上さん」

席に着いて春斗が軽く挨拶をすると、今晩はじゃないわよぉ。と声を大にしている。

「まぁね。春斗君の気持ちは、大体察していたからそれはいいとしましょ」
「えっ? 気づいてたの?」

春斗が驚いて問い返すと、判り易いから。と笑われている。

「問題は、香夏子よ、香夏子」
「え? 私?」

今度は私が目を大きくして驚いていると、私に何の報告もせずに、と怒られた。

それもそうだろう。
まさか私だって、春斗とこうして付き合うことになるとは、思ってもみなかったのだから。



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