春に想われ 秋を愛した夏
そのうちに私もウトウトとしてしまい、そのまま目を閉じ眠りについてしまったんだ。
あのあとは、どうしたんだったろうか。
塔子が先に起きて、私を起こしてくれたんだったけ?
それとも、秋斗が先に起きてその場からいなくなり、私一人そのままの姿勢で寝ていたんだったろうか?
曖昧な記憶に、その後のことが思い出せない。
ただ、その時の私はとても幸せだった。ということしか。
昔の記憶を辿っていると、幸せな気持ちのまま睡魔がやってきた。
BRのカウンターを見れば、まだたったの二〇分ほどしか観ていない。
春斗と過ごした昨日。
ほとんど眠らせてもらえなかったのが、響いているのかもしれない。
「映画観たいんだけどなぁ……」
呟きを漏らしつつ、背もたれにしていたソファに上がり込み横になると、そのまますぐに眠ってしまった。
次に目を覚ました時には、窓の外はすっかり暗くなっていて。
もったいない時間の過ごし方をしてしまったな、と少しばかり後悔する。
バッグの中に入れっぱなしにしていた携帯を取り出すと、春斗から何件かメールが来ていた。
昨日は楽しかったという内容のものが一件と、他は、今なにしてる? なんていうような、仕事の合間に送ってきたようなメールが二件、一時間ちょっとおきに続いていた。
私からの返信がないせいか、そのあとからのメールはなかった。
無視したみたいで、なんだか悪かったかな。
今更とも思ったけれど、昨日寝てなくて転寝してしまったことを冗談交じりに返信しておいた。
きっと、春斗も寝不足だろうな。
うーんっ。と伸びをして立ち上がると、突然の空腹に襲われる。
ほんの少し食べただけのミックスナッツに視線をやってから携帯を手にした。
「塔子、今日も居酒屋に居るかな?」
一人呟き、メールで連絡を入れると【 待ってる 】とすぐに返ってきた一言が嬉しくて笑顔がこぼれた。