春に想われ 秋を愛した夏


週末、何を思ったのか。
私は、自宅の最寄り駅よりも一つ先の駅にいた。

何の手がかりもない。
知っているのは、春斗の言った一つ先の駅に住んでいる。という情報だけ。

連絡先といわれて以前貰った名刺も怒りに任せて会社のシュレッターにかけて、既に手元にはない。
おかげで、住所なんてもちろん分からない。

駅前に降り立ってから、自分のしていることに何をやっているんだ。と頭をもたげていた。

そもそも、逢ったところでどうしようというのか。
逢って何を話せばいいのかも解らない。
だけど、あんな風に怒った秋斗の背中の寂しさが心に焼きついて、どうしようもなくじっとしていられなくなっていた。

逢えば何かが変わるとか、解るとか。
その何かがなんなのか。
そんな事は微塵も解らないし考えもつかないけれど、とにかく今秋斗に逢うことしか考えられなかった。



< 146 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop