アーケードを抜けると、春斗は大通りに出てタクシーを拾う。
二人で乗り込んですぐに、春斗が運転手へ道を告げた。

「今日は、僕の家でもいい?」

運転手に告げられた住所が私の自宅じゃない時点でそうだろうな、とは思ったけれど、改めて訊かれるとなんだか戸惑ってしまい、僅かに躊躇ったあとに頷いた。

深夜近くのタクシーは、滑らかというほどでもないけれど程なくして私たちを目的の場所へと運んでくれた。
たどり着いたマンションは綺麗で、築年数がまたそれほど経っていないだろうと思わせた。

「綺麗なマンションだね」
「うん。建ってすぐに入ったんだ」

ついていたよ。と小さく春斗が笑う。

通された部屋は、春斗らしく綺麗に纏まっていて、たくさんある塾の書類や本たちが棚へと整然と並べられていた。

「これじゃあ、お嫁さんは要らないね」

冗談で言ったつもりだったけれど、春斗の目がやけに悲しそうに歪んだものだから、私は慌ててしまった。

「あ、ごめん。なんていうか。ほら、あんまり綺麗に片付いてるから、つい」

私の部屋より綺麗なんだもん。と付け加えると、やっといつもどおりに微笑んでくれる。

しばらく会わなかったせいか、ぎこちなさが拭えない。
まるで、付き合い始めのお互いを余り知らないもの同士のような、たどたどしさが二人の間にあった。

キッチンに向かう春斗から、座り心地のよさそうなソファに座るよう促され、言われるままに腰掛ける。
優しく抱え込まれるような、なんとも言えないフィット感のいい座り心地に、思わず息を漏らす。

「すご……」

僅かに感嘆の声を漏らすとその声が聞こえていたようで、ボーナスはたいた。とキッチンの方から少し笑いながらの声が聞こえてきた。

どおりで、いい感じ。

納得しながら、近くにあるクッションを引き寄せて抱き寄せる。
ソファと同じ柄のクッションも、抱え心地がいい。
なんだか、一日中この上で暮らせそうなくらいだ。