春に想われ 秋を愛した夏


「あ、あきと……!?」

うそでしょ。

偶然なのか何なのか、三度目の再会をしてしまった相手に毎度のことながら言葉がない。

秋斗は、私とは違う別のモーニングセットの乗ったトレーを置くと、ケチャップとマスタードがたっぷり乗ったホットドックにさっそくかぶり付いている。
豪快に黙々とホットドックを咀嚼し、アイスコーヒーを飲む姿に、どうしたらいいのか私の思考は停止したままだった。
そのうちに秋斗がホットドックを食べ終わり、半分ほど残ったアイスコーヒーを喉に流し込んだあとに口を開いた。

「俺、ここで時々朝飯食ってんだ」
「……知らなかった」

というか、知っていたら、私はきっとここでモーニングなどとは考えなかっただろう。

「昨日、大丈夫だったか?」

思考も動きも停止したままの私に構うことなく、秋斗は昔と何一つ変わりない調子で話しかけてきた。
あんなに冷たい態度をされたというのに、笑いかけてさえくる。

「平気……だよ」

ようやく言葉になって告げると、よかった。と笑う。
その笑顔につられて、思わず口角が上がってしまった。

「香夏子は、夏にいつも食欲なくしてただろ。名前に夏なんて漢字がついてるくせに、暑いのが苦手とか笑えるし」

本当にケタケタと笑っている秋斗に、つい反抗心が出てしまう。

「自分だって、秋なんて漢字ついてる癖に、ブタクサにやられて毎年くしゃみばっかじゃない」

勢い良く捲くし立てると、憶えてたんだ。なんて、なんだかちょっと嬉しそうな優しい声を出すもんだから、ついトクンと心臓が反応してしまった。

油断したその音に気づかれてしまいそうで思わず目を逸らし、まだコーヒーの残るカップを引き寄せた。


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