春に想われ 秋を愛した夏
視線が合わなくなったことを切欠のように、秋斗は自分のアイスコーヒーを一気に飲み干してから私を見る。
「それ。食わねぇのか?」
私のトレーに乗ったままの半分残ったサンドイッチを、ちゃんと食えよ。と言わんばかりに秋斗が見る。
食べ切れそうにないな。と思っていたけれど、秋斗の挑発的な態度に意地になって手に取った。
なのに、口元まで持っていったところで気持ちが悪くなり、結局胃が受け付けなくて口元から下ろしてしまう。
「何、無理してんだよ」
意地になる私の姿が可笑しかったのか、秋斗は苦笑いを零し、しょうがねぇなぁ。とサンドイッチを私の手から取りあげ自分の口に持っていった。
すると、ものの数十秒であっという間に食べ終えて説教じみたことをいってきた。
「一気に元に戻そうなんてすんなよ。少しずつ食べる量を増やしていけばいいじゃん」
「わっ、わかってるよ」
素直に頷けずに憎まれ口を叩くと、解ってんならいいけど。といって秋斗が徐に私の右手首を掴んだ。
「ちょっと、なにっ!」
驚いて手を引いたけれど、しっかりと掴んで離してくれない。
「細っせー腕。マジでちゃんと食わないと、骨だけになるんじゃねーの」
私の手首を掴んだまま、自分の目線まで持ち上げて、まじまじと見ている。
「やめてよ」
もう一度手を引くと、今度はパッと離して澄ました顔をしている。