春に想われ 秋を愛した夏
「香夏子は知らないかもしれないけど、意外といろんな人から香夏子がいいっ。ていう噂を聞くよ」
「うっそ。私のところにそんな話、少しも来ないよ」
冗談のような嬉しい話に、今度は私の顔が少しだらしなくなっているかもしれない。
「仕事人間だから、ちょっと近寄りにくいんじゃないの?」
「仕事人間? 私が? そんなことないでしょ」
「あるよー。だって、香夏子ってば、真面目だもん」
「そうかなぁ?」
「そうだよう。お宅のところの課長さんだって、お気に入りじゃん」
「えっ!? 課長? いっつも早くしろって、急かされてるのに?」
「香夏子に任せると、完璧だしはやいから、課長もついつい頼っちゃうんじゃないの?」
「うそだぁ~」
まったく信用していない目で見ていると、ミサは、ホントホント。なんて真剣に頷いている。
「そうそう。香夏子の隣の同僚の新井君だっけ? 彼も、きっと香夏子のことがお気に入りだよ」
「えっ!? それこそないないっ」
ニキビを吹き出物なんていうデリカシーのないあの新井君が、私に好意を持っているわけがない。
「ちょっとー。知らないと思って、面白がってるでしょー」
私が指摘すると、ミサはケラケラと笑っている。