春に想われ 秋を愛した夏
注がれるお酒を追加で頼んだつまみと一緒に味わっていると、お酒に口をつける合間に、ポツリと秋斗が話し出す。
「ちゃんと食ってくれて、安心した」
秋斗のその言葉が、あんまりにもあったかい雰囲気と優しさを滲ませていたものだから、ふいに目頭が熱くなっていく。
あんな風にふられて、一緒にいることのできない相手だとわかっていても。
優しく心配されたら、胸がいっぱいになってしまうじゃない。
けど、わかってる。
もう、好きになっても仕方のない相手だって、わかってるから。
この優しさは特別じゃないのも解ってるから。
じわり浮ぶ雫を誤魔化して、やっぱり私は強気に出るしかない。
こうしないと、浮んでしまった涙をせき止められない。
「心配しなくてもいいし。ちゃんと食べてるからっ」
お猪口に残った日本酒を、グイッと一気に煽る。
涙に気づかれたくなくて、視線を逸らして、あーおいし。なんて少しわざとらしいくらいに言ってのけた。
「確かに。さっきの食べっぷり見てたら安心したよ」
ふざけた調子の私に言うと、秋斗もお猪口を空にする。
結局二人で五合ほどを空けて、かなりいい気分になって店を出た。