―――― 八月終わりの告白 ――――





秋斗の前から逃げ出して、十日程が経っていた。

うちの会社へ来る用事がないのか、最後と言った私の言葉に従っているのか。
あれから秋斗に逢うことは、なかった。

私自身も、秋斗がいつもモーニングを摂っている会社近くのあのカフェに行くのを避けていたし。
連絡先を教えたわけでもないから、携帯に連絡など入ることもない。

これでよかったんだ。
一度ふられた相手に近づいて、また同じ痛みを負う必要なんてないのだから。

なのに、気がつけばこうやって秋斗のことを考え溜息をついてしまう。

「なんだよ、さっきから。しけた溜息ばっかりつくなよ」

隣の新井君に嫌味くさく言われても、ごめん。と力なく返すしかできない。

私は、どれだけ秋斗に未練を抱えているんだろう。
自分の情けなさに嫌気がさす。
想い続けていてもどうにもならない現実を、いい加減に受け入れなければいけない。
けど、どうすればそれを受け入れられるのか、方法がみつからないんだ。

「不幸全開みたいなオーラを何とかしろよ。こっちにまでうつりそうだ」

呆れながら零す新井君は、約束の豪華な昼飯おごってやるから、そのオーラを消せ。とその日ランチに誘ってくれた。


少し歩いた先にある、回らないお寿司屋の特上ランチ。

「文句ないだろ?」

ウニだのイクラだの大トロだのが、これでもかってくらいの新鮮さを放ち寿司下駄に乗って現れる。

「昼間っから特上寿司なんて、贅沢~」

できることなら、日本酒を頂きたいくらいだ、と嬉しさに自然と顔が緩んでしまう。