「おまえな、何て顔してんだよ」


法資が苦笑しながら、悠然と歩み寄ってくる。

それでもまだ自分の目を疑って彼を凝視していると、鈴木が横から割って入ってきた。


「あはは、相原ちゃん、マメ鉄砲食らった顔してら」


からかわれてもなおまともなリアクションが出来ずにいると田子が「座れ、座れ。挨拶も後だ、後!」と急かしてきたのでひとまずみな着席した。法資は田子に促されて泰菜の隣に腰を下ろす。


「……よう。お疲れ」


小声で言われて顔を上げると、隣に座った法資はやわらかい表情を浮かべて自分を見ていた。大げさではないその自然な笑みに、一瞬状況も忘れて目が釘付けになってしまう。



----------ほんといい男だなぁ。



自分の彼氏に見惚れてしまうなんて馬鹿みたいだけれど。恋人の欲目を差し引いてもやはり法資はいい男だと思う。この人がわたしの彼氏なのか、とあらためて思うと妙に胸がどきどき騒いでくる。


「泰菜?どうかしたか?」
「あ……その」


こんないい男を半日以上もほったらかしにしていたなんて、おまえは何様だよと自分で自分にツッコミを入れながらその場で頭を下げた。


「……今日はごめんなさい、急に呼び出しがあって……」


相当怒っているだろうと覚悟していたけれど、法資は手を振って「今はいいから」と言う。


「とりあえずビールでも頼むんじゃないのか?」


たしかに人前でするような話でもないし、思ったよりも法資が機嫌を損ねていなそうだったので、「そうだね」と頷いて、田子たちにジョッキの大にするか中にするか訊いて注文を取りまとめる。それを店員に頼んだ後ではたと気付いた。


「そういえば丹羽くんは?」
「ああ、あいつならさっき帰るって俺の電話に連絡あった。家のモンが急に熱出したとかって言っててな」


班長の田子が答えると、向かいに座った井野がおもしろくなさそうな顔をした。


「なんでぇそれ。もっとマシな言い訳考えろってんだよ。一緒に飲む気がないならないでこっちはかまわねえのによ」

中途半端なことしやがって感じ悪ぃな、と吐き捨てるので思わず「でも丹羽くん、そんないい加減な子じゃないと思いますよ」と庇う。


「あの子、本当に班長とか井野さんたちと飲みたがってましたし」
「へえそうかいそうかい」
「本当ですって。きっとほんとに外せない急用が出来たんですよ。だからまた今度飲むときは丹羽くんも誘ってあげてください」


泰菜がひたすら低頭に「お願いしますよ」と頼み込んでいると、井野は満更でもなさそうに「まあ考えておいてやるよ」と答えた。


「ありがとうございます。丹羽くんのこと、これからもよろしくお願いしますね」
「はいはい、わかったよ。でもまあ、今日は丹羽くんのことはともかくよ」


言いながら井野は意味ありげに法資をちらりと見る。


「……いっつも控えめでいい子な相原ちゃんが、まっさかこんな面食いだったとはねぇ……」





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