狛犬に好かれました。
恵愛



2人とも起床し、もう時刻は11時を回ろうとしていた頃……



「買い物行ってくるから」


「はいよ」



廊下からチカゲの返事だけ聞くと、その場を通り過ぎた。



靴を履き、外に出ようとした瞬間、ドスンと大きな物音が社中に轟いた。



何事?と思い、急いで戻ってみると、
さっきまで新聞を手にしていたチカゲが横たわりうずくまっていた。



「チカゲ!チカゲ!」



肩を揺すりながら名前を連呼する。


どうしよう、どうしよう……


迫りくる不安と焦りが私の心をどんどん曇らせていく。



咄嗟に携帯で119番を押した。


しかし、すぐさま消去した。



コイツは狛犬だ。


人に診てもらってもしょうがない。



< 19 / 23 >

この作品をシェア

pagetop