呼び出し

ある日の事・・・

私の小学校から一緒にこの私立中学に進学した子が

「今、不良仲間と遊び歩いていて、まともに授業も受けてないんだよ、
 付き合う友達が悪いから、ああなっちゃったのかも」

私の事を、そんな風に地元の友達に言っていたと耳にした。

私は、つるんでる仲間に、その話をすると、皆、口を揃えて

「そんなの、やっちゃえよ」と言った。

私は、その言葉に背中を押されるように、その子の元へ行き

「ちょっと、トイレまで来てよ」と呼び出した。

正直、あの時、私は何を、あの子に言ったのか覚えていない。
覚えているのは、ただ、あの子が泣きながら私に謝って謝って
それを上から見下す私が居たことだけ。

何が私、そんなに偉かったんだろうってね。
今じゃ思うけれども、私は自分が小学校の頃、
あれほど怯えていた事を、この子に対してやったと言うのは事実。

その頃は、もう、自分が呼び出しに怯えていたなんて考えることもなかったから。


この件を皮切りに、私は、ある意味、調子に乗って行く。

つるんでた仲間に他校の先輩を紹介してもらい
私が小学校の頃に呼び出しを繰り返した地元の先輩に復習する事にした。

紹介してもらった先輩5人を連れ私は、地元の先輩達を呼び出した。
そして、そこで土下座して謝罪させた。

気分爽快。この一言だった。

思い切り笑った。こいつらバカだと思った。
私を甘くみるんじゃねーよ。
そう思った。

私は、少し道違いな自信を身に付け
それを強さと言う間違った武器にして
毎日を過ごしていた。
< 6 / 63 >

この作品をシェア

pagetop