桜の樹のように・・Ⅲ

美容師

私の行っていた私立の中学はエスカレーターで、そのまま高校に進学することが出来た。でも私は進学をしたくなかった。

何人かの、つるんでた友達は中学を卒業してから高校に進学をしない子も居た。

中学校4クラスに対して高校は6クラスになるので、高校から2クラス分の生徒が追加入学してくる。
その為、中学校の居心地の悪さも高校になったら変わったかもしれないけれど、私は行きたくなかった。

もう1時間半の通学も面倒だったし、今更、また友達作りの努力をするのも嫌だった。

しかし両親に高校に進学せず働きたいと言うと即答で反対されてしまう。
何度、言っても、こればかりはダメだった。

そのため、私は仕方なく、高校に進学するが、入学式から数日、登校した後は、また不登校となった。

どこに行くあてがある訳でもないので、家でゴロゴロと寝ていれば親の小言も増える。

私はアルバイトを探す事にした。

そして駅前にあったファーストフードでバイトを始め、「学校に行く」と嘘をついては朝から晩までバイトをしていたので、高校1年生にしては、結構な収入を得ていた。

元々、1人娘で甘やかされていた私は、中学の頃、親から毎月10万近い小遣いを貰って居たので、高校に進学しバイトを始めた関係上、小遣いはなくなったけれど、バイトで稼いだ15万くらいの、お金は、洋服を買ったりして、すぐに無くなった。

そんな頃、私は、バイト帰りに、ある美容室の入り口に貼られていた求人に目が止まる。

「美容師見習いアルバイト募集。資格なしでもOK。気軽に問い合わせください」

美容師か・・・・。

そう言えば私の田舎は美容室を営んでいて
母親も元々は美容師だった。

それもあってか、子供の頃、田舎に遊びに行くと遊び場は美容室だったので、お店のあの匂いが、とても好きだった。

私は、その求人に書かれた電話番号を控えて帰宅し、翌日、美容室に電話をする。
面接のアポを取って、すぐに履歴書を書き面接に向かった。

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