未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
御曹司の葛藤
「下品な事言わないで」


と言ったのは母だった。母は由緒ある徳川家の出で、生まれながらの生粋のご令嬢だった。だから慶次が言い出した、殆ど下ネタのような話は嫌いなはずだ。と思ったのだが……


「結婚前にそんな事、本来は許しませんよ? でも、今回だけは別ね。真田家の存亡がかかってるんだもの。信之さん」

「あ、はい」

「まだよね?」

「何がでしょうか?」

「赤ちゃんに決まってるでしょ?」

「赤ちゃん……? まだに決まってるじゃないですか!」


考えてみれば赤ちゃんどころか、俺と小松はキスすらした事がなかった。当たり前だけど。


「急ぎなさい。何なら今夜からでも……」

「今夜からって、何をするのですか?」

「そ、そんな事、言わなくても解るでしょ?」


母は、年甲斐もなく赤い顔をして、ちょっと可愛いかった。もちろん母が言う意味は瞬時に解ったが、お堅い母をからかってみたくなったのだ。

それにしてもこの小松を、というか、小松と、今夜か……


複雑な思いで小松を見ると、彼女は下を向き、耳が真っ赤になっていた。

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