未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「き、君は……誰?」


その女の顔に俺は全く見覚えがなかった。


「えっ? 何言ってるの、あなた?」


“あなた”?

これにも俺は違和感を覚えた。あまり人から呼ばれる事のない二人称だし、その言い方が少し鼻に掛かかり、何と言うか……そう、甘えたような声に聞こえたのだ。


「どちら様でしょうか?」


もう一度聞いてみた。するとその女性は、突然ハッとした顔をした。


「今日は何日?」

「はい?」

「何月何日? 西暦も言って頂戴!」


いきなり日付を聞くとはどうした事か。しかも話し方が馴れ馴れしくないか?
初対面だというのに……


「信之さん。今日が何年の何月何日か教えて?」


俺が唖然としていると、今度は懇願するかのように女性は言った。しかも、俺の名前を知っていた。


「えっと、今日は……」


訳が分からないながらも、今日が何年の何月何日かを俺は答えた。すると、


「ああ、またやっちゃったんだわ……」


と女性は呟いた。

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