…………!?

ちょっと待て。今、俺は“好き”って言ったよな? 心の中でだけど。
俺は小松が好きなのか? 14も下の小松を? 使用人なのに?

小首をちょっと傾げて俺を見上げる小松を見てたら、胸がバクバク言い出し、顔がカーッと熱くなって来た。そして、小松の体を抱き締めたいという、強い衝動が体の内から沸々と湧き上がり、手が勝手に動いてしまいそうで、それを俺は必死に堪えなければならなかった。


こ、これは本物かもしれない。いや、本物に違いない。俺は小松が好きなのだ。どうしようもないくらいに。これが“愛”というものなのだろうか……


「信之さま、どうかされましたか? もしかして、熱があるのでは……」

「や、やめてくれ!」


小松が手を伸ばし、俺の額に触れようとしたが、俺は咄嗟にその白く小さな手を払い除けてしまった。今、小松にそんな事をされたら、俺の理性は一遍で飛んでしまいそうだからだ。


「ごめん。大丈夫だから、ヒロミを捜しに行こう?」

「は、はい。私こそ、気安くしてすみませんでした」


小松は俺に叱られたと思ったらしく、シュンとしょげ返ってしまった。もちろんそうではないのだが。そんな小松がいじらしく可哀相で、頭を撫でてあげたい衝動に駆られたが、それをするとそれだけでは済みそうもなく、俺は小松から視線を逸らし、無言で歩き始めた。


そうか。そうだったのか。このところのモヤモヤはそういう事だったのだな。

つまり俺は、小松に恋心を抱いたのだ。女性と交際した経験は何度かあるが、相手に対してこんな気持ちになった事はないと思う。言ってみれば、これが俺の事実上の初恋ではないだろうか。34歳にして、初めての……


だが、俺には定めがある。菊子さんと結婚するという、決まっている未来が。小松を諦め、そうするしかないのだろうか……


いや、それは嫌だ。絶対に……

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