未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
ついに浅井家に返事をする日がやって来た。しかし俺は会社に来ている。特にその予定はなかったのだが、兼続に呼び出されたからだ。菊子さんの調査結果を報告したいから、と……


あの後も、俺は小松に普通に接した。伊達という男の事を問い詰めたい衝動に何度も駆られたが、じっとそれを我慢した。小松の出方を窺いたいからだ。だが、小松の態度や行動には何の変化もなく、もちろん菊子さんの件に触れてくる事もなかった。

いったい小松は何を考えているのだろうか……


陰でコソコソ男と密会している小松が、俺は憎くて堪らない。その度にあの男に抱かれていると思うと、腸(はらわた)が煮えくり返る思いだ。こんな感情は、生まれてこの方初めてなのだが。


役員室で待っていると、いつになく神妙な顔をした兼続がやって来た。


「わさわざ悪いな?」

「いや、こちらこそ……」


兼続は俺の向かいに座ると、テーブルの上にやや厚めの茶封筒をドサっと置いた。


「これは浅井菊子さんに関する調査結果だ」

「うん」


どうせ大した結果は出ていないだろう、と俺はタカをくくっていた。多少好ましくない結果が出ても、菊子さんとの結婚に変更はしない、とも……

そう。俺は菊子さんと結婚する事に決めている。一時は小松を……とも思ったが、隠れて男と会っているような女ではダメだ。


くそっ。

また小松の事を考えてしまった。考えないようにしているのに……

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