しっとりと   愛されて
δ.凄腕の専務
金曜日、会社帰りに駅前のお惣菜屋へ寄った。

ロータリーで待つ孝二さんの車に近づいた。

「お待たせ、今日は中華よ。」

「じゃあ、今夜は紹興酒で君を酔わせてみよう。」

「私、酔わないわ。」

「そうだった。百合乃は俺にしか酔えないんだったな?」

孝二さんの部屋で食事しながら話しをした。

「孝二さん、坪井専務って、そんなに凄腕でやり手なの?」

「専務?そうだよ。彼のひと言で全てが動く。」

「そうなの?私にはそんな風に思えないけど。」

「何かあった?」

「専務室にはいつだって誰かしら女子社員がいるのよ。一昨日は柏原先輩を膝に乗せていたし、昨日は桐野先輩を膝に乗せて葉巻きに火をつけさせていたわ。」

「今日は誰を膝に乗せていたんだ?」

「今日は誰も乗せてなかったけど、あんなことをしているなんて。」

「でも女子社員は皆嫌がってなかっただろ?」

「そうね、そう言えば皆笑って楽しそうにしていたわ。なぜかしら?私だったら膝に乗るなんて絶対嫌よ。」

「専務はストレスが多いから単なる気晴らしだろ?」

「そうかしら?」

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