しっとりと   愛されて
η.特別な存在
私は社長に一時帰国休暇を許可された。

社長秘書に帰国したことをメールで伝えた。

ワンルームの私物をトランクルームへ預けて引き払った。

必要なものだけをロスのコンドミニアムへ送った。

休暇とはいえ、やはり会社へ顔を出した方がいいと思った。

マーケの常務代理に挨拶した。

その後、社長秘書のところへ行き、社長と約束した件を確認した。

休暇のお礼も言いたかった。

社長秘書は一見して人当たりの良い、上品な物腰で、とても秘書をこなせるようなキビキビした感じではなかった。

どちらかと言うと、和服の似合いそうな旅館の女将と言った方が合っていた。

「どうぞ、社長がお目にかかるそうです。」私は彼女の後ろを歩いた。

「やあ、椿くん、ご苦労だったね。」

「休暇をありがとうございます。」秘書は出て行った。

「さあ、掛けて。皆は元気かな?」

「はい、現地でスタッフを数人雇いました。」

「そうだな、これからも増員した方がいいね。ところで、食事の約束をしていただろう?」

「はい。」

「君は何が食べたい?何でもご馳走できるが。」

「社長にお任せ致します。」

「和食にしよう。6時30分にまたここへ来てもらえるかな?」

「はい。」

「君との食事が楽しみだ。」

「ありがとうございます。失礼致します。」

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