繋いだ手
今から恋人同士?
「じゃ、行こう」

 握り締めた彼女の手から伝票を奪い取ると、やっと彼の手から解放される。そうと決まればとでも言いたそうに、彼はさっさとレジへ向かった。

「……あ! あのっ」

 突然の出来事に伝票を持っていかれた事に気付くのが遅れ、慌てて彼女が立ち上がる。

「ちょっと、待ってくだ――あぁっ」

 膝の上に置いていたバッグが床に落ち、中身が少し散らばった。それを拾い集めてもたもたしている内に、既に会計を済ませた彼は店の前で腕を広げて背筋を伸ばしていた。

 背後に彼女の気配を感じた彼が振り返る。

「さ、行こうか」

 と、満面の笑みでスタスタと歩き始め、追いかける様にして彼の後をついて歩いた。
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