今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。

変化を望んで(歩夢side)

「はい、陽菜」

 僕はいれたてのココアをテーブルの上に置いた。

「ありがとう」

 陽菜はソファの上でクッションを抱え込んでいる。
 どことなく浮かない顔。


「どうしたの? 何かあったの?」

「ううん。何でもない」

 陽菜はクッションを脇に置くとココアに手を伸ばした。

 白い湯気が上がるココアを口にして、ほぅと息をつく陽菜。


「大会の疲れが出てきちゃったのかな? 元気ないね」


「あっ、そういうわけじゃないの。あー、でも、やっぱり疲れてるのかな」

 どっちともつかない曖昧な言葉。

 燃え尽きちゃった?

 決勝戦は今までないくらいの大熱戦で、見ている僕も緊張がハンパなかったし。
 試合をした本人はその比じゃなかっただろうしね。

 帰ってきた時の陽菜は、思っていたよりもすっきりとした表情をしていたし、インターハイに向けて頑張るなんて言っていた。

 前回の対戦では、しばらく声をかけるのも躊躇われるくらい落ち込んでいたから、それに比べると格段の成長だよね。

 
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