あなたのキス・・・全部好きだった
忘れられないよ・・・今も
冬の潮風はなんて冷たいの・・・

こんな時期に海デートなんて、とおるくんってば不思議。

でも、その日は晴天で、砂浜を歩くと、心地よく

私はそれなりに満喫していた。

「恋人と海とか来てみたかったんだ~」

「そうなんだ・・・」

最近思う。

とおるくんの思い描く恋に

こうして身を任せているのもなんか好き。

とおるくんの行きたい場所や

したいこと

それに向かって必死な彼を見ていると

可愛くって愛おしくって・・・。

夕暮れまでこうして私たちは海沿いでランチしたりお茶したりデートを楽しんでいた。

「ねえ・・・座ろ。」とおるくんは砂浜にシートを敷いて

私たちは2人で夕日を見つめていた。

「今日は泊まりでもいいの?」

「え・・・」突然の質問にビックリしちゃって

「ゆっくり過ごしたいな・・・。」

なんだかこの1年、とおるくんの交通事故とかもあって、なんとなくバタバタしていた。

私も一時、恋を休んでいたような・・

普通だったらもっと早くこんな展開あったのにな。って急にそんな想いがこみ上げていた。

「そうだね・・・。とおるくんがいいなら、いいよ。」

夕日が落ちると・・・

街灯のない砂浜は真っ暗で

私は急に怖くなったけど

とおるくんはそれを待っていたかのように

私にそっとキスをしてきた。

「誰か来たらどうするの?」

でも、とおるくんは止めてくれない。

そのキスは

今までとは全然違って

私の脳内をとろけさせるようなキス

真っ暗でなにも見えないけど

唇から伝わる快感。

誰かにみられちゃったらどうしよう・・・そんなドキドキをよそに

とおるくんは器用に舌を絡ませてくる。

初めての時はあんなにゴツゴツと歯があたっていたのに・・・

今ではこんなにディープなキスもするのね。

「好き」

私は貪欲なスイッチでも入ってしまったか・・・

彼のその情熱に答えるかのように

必死にそれを受け止めた。

暗闇の中で

聞こえるのは波の音と・・・

私たちのキスの音・・・

こんなに感じるキスは初めて

「これ以上・・・ここではダメ」

その後、私たちは海の見えるお部屋へチェックインした。

「いいの?私で?・・・」

私はとおるくんの全ての「初めて」をもらってしまった。

キスも・・・

全て・・・

淡い思い出は蘇る・・・

でも

なんでだろう

なんで別れてしまったのか

今でも思い出せないよ・・・私





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