Doll‥ ~愛を知るとき
†05 哀怨
あたしは踵を返し、アパートに向かった。
何故だか嫌な予感がして、得も言われぬ恐怖心が足をすくませた。
だけど、その男の人は商店に入って行ったみたいだった。
靴音が途切れ、恐る恐る振り返ると誰もいなかった。
一目散に駆け出した。
ほんの僅かな距離を走っただけ、なのに、激しく息切れがした。
緊張で体に嫌な汗が流れている。
慌てて玄関の鍵を開け、部屋に入る前に振り返って辺りを見回した。
─ 誰もいない‥
あたしはホッと安堵の息を吐き、中から鍵を閉めた。