ラブレターを貴方に
ラブレターを貴方に


「あ~高橋さん、今日もカッコイイ~!」

デパートの、ファッション&メンズフロアの一角。紳士服売り場のエース、高橋さんを盗み見る私に、同僚の愛が呆れた口調で呟く。

「ハイハイ、王子様もいいけどちゃんと仕事しなさいよ?」

「わかってるって!でも、お客さん居ないんだから、仕方ないじゃない?」

愛と私は、紳士服売り場の前にある、化粧品売り場で働いている。
実は、かなり高いブランドで、お客さんもなかなか入ってこないのが現状だ。

それゆえ、暇をもて余しては、こうして紳士服を覗いている私に、『キモイ』とか、『市原悦子か』とか、頻繁に愛につっこまれているのだ。

今どきの茶髪なのに、フォーマルな服をスマートに着こなし、お客さんとも気さくに話せる、笑顔が素敵な高橋さん。

そんな彼に、一目惚れした私は、目が合っただけで、失神してしまうんじゃないかと思う程、恋に奥手な為、会話をした事など一度もなかった。

自分でも情けないが、何を話せばいいのか、全くわからない。





< 1 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop