淋しいお月様
セピア色の夕焼けが眩しい
そのまま、私が静哉の仲間からこっそり抜け出したことについては、静哉からは何のお咎めもなかった。

やっぱり、ひととおり自慢したところで、気が済んだのだろう。

それに、私に対して、静哉はもう気持ちがないことは薄々感じ取れた。

彼女が退席して、その後何の連絡も心配もないってこと、全く気にしてない様子だ。

実際、あれから何の着信もなかった。

私としては、このままなかったことにするのは、自分自身で納得がいかない。

区切りが欲しかったので、私は次の日、仕事が終わると静哉の独身寮へ向かった。

独身寮でも、静哉の隣の住人は女をとっかえひっかえ連れ込んでいる、ということを聞いていたので、私も堂々と入って行くことができた。

静哉の部屋の前に立つ。

もう帰ってきている頃だろう。

ピンポーン。

私は何の躊躇もなしに、インターホンを押した。

しばらく間があって、出てきたのは――。

女のひと、だった。

私は咄嗟に表札を見る。

ちゃんと、静哉の名字が書かれてある。

「何ですか?」

まごまごしている私に、女のひとはイラついている様子だ。

「あの、静哉はいますか?」
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