蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
13 【巨大企業】

数週間後の昼下がり。


拓郎は、池袋の『日翔(ひかけ)グループ本社ビル』の前に佇んでいた。


滅多に着ることが無い一張羅のダーク・グレーのスーツに身を包み、振り仰ぐその視線の先には、都会の霞む空を背景に巨大なビルがそびえ立っている。


大きい、なんて言うのは超えている。


地上六十階。


都会のビル群の中にあっても、まるで堅牢な要塞のように圧倒的な存在感を放つこのビルは、日翔グループの本社ビル。


『株式会社HIKAKE』を筆頭に、その子会社や関連企業、銀行やホテル、果てはレジャー施設まで入っている巨大な複合都市施設でもある。


この王国を一代で築き上げ、そのトップに君臨する伝説の企業家。


日翔グループ・会長『日翔源一郎』


藍の、祖父――。


拓郎は、その人物に会う為に、ここに来たのだ。

< 217 / 372 >

この作品をシェア

pagetop