蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
14 【日翔物研究所】


拓郎が、『日翔生物研究所』の住所が記された、藍からと思われる二通目の置き手紙を手にしていた頃、当の日翔生物研究所の一室でも、『その手紙』に関して、二人の人間の間でやり取りが行われていた。


二十畳ほどの広さがある空間の四方の白い壁には、窓はなく、まるで巨大なオベリスクのような形状のメインコンピューター『BIG MARSH』、通称『BM』を中心に、大小様々なコンピューター機器が所狭しと並べられている。


その『BM』のメインコンソールの前に陣取って居るのは、端整な顔立ちの、四十がらみの白衣の男で、忙しなくキーボードを操ってはモニターに打ち出される数字にメガネ越しの厳しい視線を投げていた。


男の傍らに佇むのは、淡いブルーのワンピースに華奢な身を包んだ、十七、八歳位の少女・日翔藍(ひかけあい)。


この研究所の直接のオーナーである、日翔グループの会長の孫娘にして、唯一の後継者と言う重責を担っている。


腰程の長さがある見事な漆黒の髪は、流れるようなウェーブを描き、少女動きに合わせて軽やかに踊る。その巻き毛に縁取られた肌の色は透き通る様に白く、一点の曇りもなく滑らかだ。


だが見る者によってその肌の色は、『病的な白さ』に映るかも知れない。

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