蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
16 【待ち人】

柏木(かしわぎ)に、お『姫様抱っこ』で祖父が居る応接室から連れ出された藍(あい)は、さほど離れていない藍専用のメディカル・ルームに運ばれた。


藍専用とは、文字通り『藍が医療を受けるためだけ』の施設で、いわばここが、日翔(ひかけ)生物研究所の存在の要でもある。


ちなみに、先ほどの応接室は一般には使われない部屋で、VIP専用。


つまり、祖父である日翔源一郎が、ここで暮らす孫娘の藍に面会に来たときにだけ使われる特別な部屋だ。


そう言う、研究所の職員でも藍の医療に関わる者達しか知らない『特別の場所』が、言い換えるなら『秘密の場所』がここには数多く存在した。


この研究所は、表向きは、日翔グループの子会社経営の一研究施設に過ぎない。


表向きとは言っても、一通りその研究はなされている。


が、しかし、その実体は、日翔藍の為の『医療研究所』に他ならなかった。


その気になれば、日翔家の個人資産で、専門の医療施設でも研究所でも建てられる財力も人脈もあるのに、何故わざわざ『表向き』と言うカムフラージュが必要であるのか?


藍自身がその理由を知ったのが、半年前、十一月。


その事実を知ったとき、藍は初めて祖父の恐ろしさを実感したのだ――。


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