どこからか、かすかに歌声が聞こえてくる。


「か~ごめ、かごめ
か~ごの中の鳥は」


鼻をつままれても分からぬ真の暗闇。そこから聞こえる声は小さいが、間違いなくその場に誰かがいることの証明。そして、歌声の合間にポタン、ポタンという音も一緒に聞こえてくる。


「い~つ、い~つ出や~る
夜明けの ば~んに」


歌声は少しずつ大きくなっていく。それと同時に、水の滴る音は耳障りな響きとなってあたりを埋め尽くす。

厚い雲に隠されていた月が、ようやくその顔を出している。それは闇に対抗するにはあまりにもか細いが、それでもないよりはましだといえるだろう。

今は草木も完全に眠っている丑三つ時。こんな時に歌が聞こえる。そんなことが簡単に信じられるはずがない。それでも、誰もが知っているであろう歌がその場には響いていく。


「つ~ると か~めが すぅ~べ~った
後ろの正面 だ~れだ」


今の時間を考えれば、不気味な雰囲気しか感じることができない。そして、ポタリと音を立てて地面に吸い込まれる色を月光は映し出す。

地面に突き立てられるように向けられた銀の刃。そこから伝うのは真紅の糸。


「あと、一人。あと一人で、全て終わる」


喉をクックと鳴らしながら囁かれる声。その場はまるで凍りついたようになり、動くものの気配すら感じられない。

だというのに、そこをゆったりした足取りで歩く存在。


ポタン、ポタン――


真紅が足跡のように数を増やす。クックと鳴らされていた喉は天を仰ぎ、乾いた笑いを響かせる。


「もう少しだよ、待っていて。あなたの無念はこれで晴らせるから」


そんな声を聞くものはその場にはいない。そして、声の主は乾いた哄笑とともに、その場から姿を消していた。残されたものに、月の光が降り注ぐ。

ピクリとも動かないものは赤い糸を引き、その場で力なく四肢を投げ出しているだけだった……



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わらべ歌  推理  サスペンス