LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
やっと収まったか?
まったく。疲れるよな。
安心して目を閉じると、
後ろのほうで香奈が、がさがさと何かをいじっていた。
「これ、なんのCD?」
CD?
俺、CDなんて持ち歩いてたっけ?
まぁいいや。
「ねぇ、聴いてみてもいい?」
「勝手にしてー」
面倒くさくて適当に返事をすると、
香奈は嬉しそうにデッキにCDをいれた。
ガチャガチャうるさいなぁ。
<<祐兎。聞こえてる?あたしだよ。麗華>>
え?
何だこれ……。
急いで起き上がると、
香奈が目を見開いて、じっとスピーカーに耳を近づけていた。
こんなCD、あったっけ?
<<祐兎のために歌った歌、届いてるかな?
あたしは祐兎がくれたメッセージ、ちゃんと受け取ったからね>>
「裕翔……。“麗華”ってだれ?」
「香奈?落ち着けって。麗華なんて知らな―」
「この女、“ゆうと”って言ったじゃない!!
メッセージって何を送ったの!?」
「だから、俺じゃねぇよ!!」
あっ……。
これ、あの時のCDだ……。
―なんのCD?―
―神崎医師、どうかしました?―
―や、何でも……―
あれだ……。
あのCDって、これだったのか?
俺は詰め寄る香奈を無視して、
デッキからCDを取り出した。
間違いない。
少し古い感じのCD。
これは咄嗟に俺が持って帰ってきてしまったCDだ。
じゃあこれ、桐生さんの……?
ていうか、“ゆうと”って誰だ?
「裕翔の馬鹿!もう知らない。別れるから!!」
「あ、おいっ!!ちょっと待てよ!!香奈!!」
バタンと音がして、
扉の奥でコツコツとヒールのあたる音が響いていた。
あーらら。
今年で3人目だったのに。
また彼女探さなきゃなぁ。
「はぁ……」
一人部屋に取り残された俺は
そのCDを再びデッキに入れた。
途中までしかきいてなかったけど、
続きが気になって仕方がなかった。
<<祐兎。聞こえてる?あたしだよ。麗華>>