LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
桐生さんと宗祐の部屋へ向かう。
緊迫した空気が流れているような気がする。
そっとバレないように深呼吸をして、ドアを開けた。
「あ?今日はそっちの……
桐生医師も来たんだ」
「お久しぶりですね。黒川くん」
こいつ、俺の時と態度が違うぞ。
ぺこりと頭を下げて挨拶をした。
「それで黒川くん。近々手術をしましょう」
「えっ?手術……?」
「そうです分からないころや
不安なことは遠慮せず
神崎医師に言ってくださいね」
「……やっぱり、こいつが手術すんの?」
宗祐はポツリと言葉を落とした。
一瞬顔を曇らせて、それから
すぐにいつもの調子に戻って言った。
「俺、まだ死にたくねぇよ」
「なっ……!!馬鹿にすんなよ?
腕はいいんだ。研修医の誰よりも」
「へえ。本当かねー」
ダメだ。
冷静になれ。
こんなガキの言葉に
いちいち目くじらたててもしょうがない。
ぐっと拳に力を入れて
なんとかイライラを抑え込むことが出来た。
宗祐はまた不安そうな表情をしていた。
そんな時、病院内のアナウンスが鳴り響いた。
〈桐生医師。桐生医師。
外科病棟ナースステーションまでお越しください〉
「呼ばれたので私はこれで失礼します。
神崎医師、後は頼みますね」
「あ、ああ、はい」
桐生さんはにっこり笑うと、
部屋を出て行った。