レンタルな関係。

◆酒豪流川


夕食時。


麻紀たちの部屋に集まった私たち4人。


「先ほどは本当にすみませんでした!!」


数回にわけて料理を運んできながら、その度に頭をさげる仲居さん。


「全然気にしてないって。逆にビビらせてごめんね」


「うんうん、何なら、俺が仲居さんにいろいろ教えてやっても…」


ガゴッ!!


「いでっ!!」


麻紀と祐二くんの漫才の隣りで、


「まあ、事故みたいなもんだから」


さらりと言う流川。

 
事故か…


まあ、そんなもんだろう。


仲居さんが見ちゃったことも、私と流川の未遂も。

 
でもこんなに簡単に「事故」なんて言われると、ちょっとムカつくなぁ。


1、2ヶ所、キスを落とされたのは確かだし。

 
あああ、でもっ! それを許してしまった私って一体…。


どうかしてる。


温泉旅行って、絶対魔物がいる。


「それにしても、唯衣ちゃんの浴衣姿もいいなぁ。ね? 流川くん」


麻紀がトイレに立った隙を狙って、ほろ酔い加減の祐二くん。


「麻紀とはまた違った可愛さっていうの? なんか、こじんまりしてて可愛いわぁ。ね? 流川くん」


こじんまりって。


っていうか、いちいち流川に振らないでくれます?


なんか…意識しちゃうじゃん…


「まあ、それなりに」


振られた流川のほうと言えば、こんな感じの返事ばっかりで。


なんだよ。これにもちょっとムカつくわ。


「んでも流川くんの浴衣姿もいいなぁ。俺、男の浴衣に興奮したのなんて初めて」



祐二くんの言葉に。


ビールの入ったグラスを持ちながら、ぴくりと頬が引きつる流川。

 
「ぷっ」


思わず笑うと。


「笑うな」


頬を引きつらせたまま私を見おろす流川の顔。


「もしかして…お風呂でなんかされた?」


聞くと。


「うるせ」


思い出したようにますます引きつる顔で、ぐびびっとビールを飲み干した。

 
げ。マジで?


こりゃ、いろんなとこ、触られたな…

祐二くん、恐るべし。


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