レンタルな関係。

◆壊したくない

 
 旅行から帰って。

 アパートでの生活がまた始まった。

 
 私と流川の関係も。

 特になにが変わるわけでもなく。


 それでも。

 旅行前と後とでは、空気感が微妙に異なって。

 
 …私だけかな、そう思ってるの。


 流川といえば。

 夜のバイトから戻ってくると、私を叩き起こし、


「腹へった。メシ」

「…メシ… はい、メシ…ふわぁぁ…」


 寝ぼけたまま、目玉焼きとかパンとか差し出せば。


「目玉つぶれてるぞ、これ」

「は…ふぁ?」

「やり直し」

「…ふぅえ?」

「これはお前が食え。俺のぶんはやり直し」

「……」


 …こんな感じで。

 
 相変わらず。


 (-"-;)



 でも。


 私が遅くなるときは必ず駅まで迎えにきてくれて。

 
 私に歩調を合わせて、少し前を歩く流川の背中を見ながら、

 時々振り返る横顔を見ながら、

 ふいに掴まれる手に緊張しながら、

 アパートまでの時間を過ごす。


 そんな関係。


 それが、私と流川。



 部屋に戻れば。

 テレビを見たり、コーヒーをすすったり。

 旅行で覚えてしまったのか、肩もみさせられたり。


 カエルは。

 そんな私たちの間に座って、赤い口を開けて笑っていて。

 
 旅行から帰ってきてからは、

 まだ、ひとつもイイ事は起こっていない。


 流川と離れる日まで…

 また何かカエルの奇跡は起こるのかな…


 …なんて思いながら、

 三日が過ぎた。




 レンタル関係、


 あと…


 

 五日間。





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