レンタルな関係。
 その日。

 バイトを終えた私は、真っ直ぐアパートに帰ってきた。


 戻り時間確認の流川からの電話も今日はなくて。

 まだ外は明るくて、買い物もあったから一人で。


 流川からの連絡がないっていうのが珍しい。

 俺様だけど、そういうところはしっかりしてるヤツだから。

 約束を破ったり、嘘をついたりするヤツじゃないから。


「どうしたんだろ」


 不思議に思いながら歩くアパートまでの道。


 部屋に戻ると、流川は居なくって。

 カエルだけが床に座って、私を出迎えてくれた。


「カエル~、ただいま。流川は? 買い物かな」


 カエルの頭を撫でてみても。

 もちろん、返事なんてないし。


「ま、そのうち帰ってくるか」


 特に気にすることもなく、私は夕食の準備に取り掛かった。


 今日は、夜になっても蒸し暑い。

 簡単に作れて、喉越しのイイもの…ってことで、素麺を茹でて。


「いただきまーす」


 ひとりで食べた。


「居ないなら、麻紀と食べてくればよかった」


 ひとりで食べるご飯は味気無い。

 素麺なんて作っちゃったから尚更。


「どこに行ったんだよ~流川直人」


 一応、流川のぶんの素麺も残しておいて。

 私は、取り込みっぱなしになっている流川のTシャツとか、パンツ…をたたんだ。

 流川のパンツをたたむことにも…

 慣れちゃったな。

 はは…。


 そうこうしてるうちに、気づけば10時ごろになっていて。

 ベランダから、少しだけ涼しくなった風が流れ込んできた。

 
 お風呂に入って、洗濯をして。

 やることをやってしまうと、することがない。


「あー、退屈」


 流川がいれば、

「コーヒー」

 とか、

「肩もみ100回」

 とか言われるんだけど。

 それがない今日は、妙に手持ちぶさた。


「カエル、何かやってよ」


 笑ってテレビを見てるカエルに話しかけたりして、時間をつぶしていた。





< 182 / 314 >

この作品をシェア

pagetop