レンタルな関係。
金魚みたいに口をパクパクする私の顔を見て、流川は口角を上げる。
「一応、番号書いておいたから」
「え? 番号?」
「携帯の。テーブルの上に乗せてきた。気が変わったら電話しろ」
は?」
「俺に会いたくなったらな」
はあああ?
この、自信過剰さ加減はなに??
そりゃあ、悔しいがあんたはカッコいいけど。
「会いたい」なんて思うほど、惹かれてませんっ。
「か、かけないもん」
「ふん。どうだかな」
「っていうか、どこに帰るの?」
「これから考える」
「これから?」
「野宿になったら、誰かさんのせいだな」
ふっ、と笑った流川は、扉を開けた。
「風邪ひくぞ。早くシャワー浴びろ」
そう言うと、外に出てしまって。
「ちゃんと鍵かけろよ。変質者に狙われないようにな」
扉を閉めながら言って。
――ぱたん。
雨の香りを残して消えた。
部屋に入ると、テーブルの上に番号の書かれたメモ用紙。
「アイツ、どこに行くんだろ…」
私は鉛筆でさらりと書かれた番号を見ながら、窓の外に聞こえる雨音をぼんやり聞いていた。