家へ帰ろう
地下にあるショッピングロードに降りて、飯が食える店を探した。
田舎じゃ滅多に食べられないような店ばかりがいくつも並んでいるし、その雰囲気にも気後れしてしまう。
こんな綺麗な店なんて、あの田舎じゃ何処をどう探したってないからだ。
色々目移りしても一歩を踏み込めないし、昼時のせいもあってどの店も混んでいた。
グルグルと見て歩いたわりに、金の心配をしてよくあるファーストフード店に入った。
この店なら、バスでしばらく行った少し大きな街にあるから、少しだけ安心して入ることができた。
注文したハンバーガーセットにかぶりつきながら、本当は白いご飯がよかったなと思う。
炊き立てで湯気の上がる温かいご飯を想像して、首を振った。
無心にハンバーガーにかぶりついていると、広がる田園の風景が頭を過ぎり、俺は炭酸の抜けかけたコーラを一気に飲み干した。
そうすることで、片田舎のあの風景を忘れられるような気がした。
腹ごしらえをしながら、これからどうするかを考えた。
六本木に原宿にお台場。
新宿のアルタもいいな。
俺は、のんきにテレビで見た場所にワクワクした気持ちを抱いていた。
けど、そのすぐあとには、今日泊まる所をまず探さなきゃいけないことに溜息が漏れた。
東京に知り合いなんて一人もいない。
寝泊りするところを確保するためには、金を払わなきゃいけない。
それができなきゃ野宿になる。
ニュースで見た、公園や駅の傍に並ぶダンボールに青のビニールハウスを思い出し、ブルブルと頭を振った。
違うっ、違うっ。
俺は、そんな生活をするために出てきたんじゃない。
新宿や原宿の傍にカッコイイマンション借りるんだ。
そんな場所に家を借りる事に、どれだけの費用がかかるのか。
俺は、少しも知りはしなかった。
ただ、バカみたいに夢を膨らませていたんだ。